[2016 ELEC座談会] 高校英語授業改善の視点(後半)
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豊嶋:僕は私学を2校勤務して、1校目が女子高で10年、次に大学院を終えたあと、今の学校に勤務しているという感じです。中学高校そして大学でも教えているので、いろいろな意味ですごく勉強になっていると思う。自分の英語教育との関わりについては、初任校は系列校が4校あって、校長先生に「他の3校を行脚してきなさい」と言われ、毎週研究日の時にそれぞれの学校を見に行きました。そしてELECの研修会で現大妻多摩の伊藤先生と出会い、「研究会で勉強しなさい」というようなことを言われて、そこから勉強するようになったかな。今何が自分の財産なのかというと仲間がいること。本当に津久井さんともなんだかんだ10何年になるし、松下さんや工藤さんとも長い、もしあの時に勉強しろと言われなければ、何も変わらなかったのかなと思う。実際、私学だと人事異動もなく研修も少ないその中で悶々としてというか。最初はやはり、研究会で他のいい指導技術を真似て「自分の授業どう?」という思いがあったけど、経験を重ねていくうちに「自分の生徒を見て」とか「自分の生徒の作ったものを見て」というように変わり、そこがひとつの英語教師としてのターニングポイントだったのかなと思う。今、中高校生や大学生を教えていて、高校生で悩んでいる姿を見ると中学のここでしっかりやらなくてはダメだとか、大学生でspeakingができないと高校のこのあたりでやらなくてはダメだとかなど、段階的に見られるようになったのが自分の経験の中で得たものなのかなと思う。その中でICTなどいろいろなものに手を出しては失敗をし、上手くいくのもあったけど、それこそICレコーダ、プロジェクターやスクリーンなども10何年前に自分で買って持っていましたし、ストップウォッチも60個くらい全員に渡せるように持っていた。ただ、今思うと、あまり使わなくなったかな。つまり道具を使う機会を選ぶようになった。以前、パワーポイントがはやり始めたときは毎回使っていたけれども、映像でいいものがあれば、すぐ見せていた。しかし、今はあまり使わなくなり、本当に使うべきところで使うようになった。パワーポイントって、あれは紙芝居のようなものだから前の話に戻れないわけですよ。全体のストーリーを追いかけたかったら黒板に昔ながらに写真を貼っていくのが意外に効果的だったりする。だからICTも実際に使うべきところで使わないと本当に上手くいかない。また先生がその道具を使わなければ、この授業は出来ないってならないと本当に宝の持ち腐れとなってしまって効果を発揮しないのかなと思う。
それから最近本当に思うのは写真の提示の仕方もちょっと考えないと、実は子どもたちの想像力を奪っている感じがして、例えば同じトピックをあげて「スライド作ってみよう」って言うと、10人生徒がいて10人違うものを作るわけだから、そういう力を伸ばしてあげたいと思ったら安易に写真を提示しないで、提示するタイミングを考えることが本当にICTを使う上で大事なのかなと最近思った。
工藤:目的理解のためだったら最初に出すかもしれないし、自分たちで読んだものをベースにその映像を想像させたいのであれば最初から出さないし、想像力とか思考力を鍛えたいのであれば後に出すというように、何をやりたいかによって変わってくるよね。
豊嶋:ICTとは情報伝達の道具で、圧倒的に音声、動画が多く、最近教育法とかで教えているのだけれども、人間の頭で処理できる情報量って限られているから情報の出し方を工夫してあげないとあまり効果が上がらない。ただ、生徒の心を動かすために、動画はものすごい力を持っていて、心を揺さぶって何か考えさせてoutput、speaking 、writingにもっていくのはICTほど優れたものはないと思っている。
工藤:それを使って何をやらせるかだよね。感動させたところで終わったら、まあ感動したって経験はいいかもしれないけど、英語の授業ということに関しては何も起きていないわけだから、そこで終わらせてはいけなくて「次に何をやるか」がないとね。
豊嶋:いい動画を見せた後に「何もしゃべらないで」というのは難しいよね。
工藤:話したくなっているからね。
豊嶋:お互いに隣の人と話してごらんと言うと「すごいよかったあ」と発したくなるわけだから、そういう道具の使い方はすごくいいのかな。先生たちがoutput活動というとspeakingとwritingを考えるけれど、心が動いて”That’s a good story” と言うだけでも、心が動いて出た英語なのだから、それはそれでいい英語なのだろうと思う。また昔はwriting活動で10行くらい、いっぱい書いてあると「よくがんばったね」と思っていたけれども、いい動画を見せて心が動いて、それが数行だったとしても、この子のoutputはいいoutputだなって思えるようになってきた。
津久井:心が動いて絞り出した英文 “That’ t a good story.”という言葉の先に、それがどのくらいgoodなのかimpressive だったのかとか、心が動いているからアクティブに頭も動いているので、そこでその先としてライティング・ストラテジーをきちっと入れてあげるのが大事だと思う。自分が感じていることを具体的にセンテンスで書かせ、まとまりのある内容にすること。心が動いてひねり出した英語ってすごく価値があって、ただ感動しただけで、「なんの授業だったんだろう」で終わらないように、その先のところをやらないといけないかなって思うんですよね。
松下:いい映像を見せたときの「感動の仕方」という点で、それぞれの生い立ちとか考え方、家庭環境が異なると、絶対意見が変わってくると思うんですよね。感動しなくても私はいいと思っていて、感動しないのであれば、感動した人の意見を聞いて「そうか。この子はこういう思いがあるから感動したんだ」ということが理解できればそれはそれでOKで、そこをどういうふうに生徒にパーソナライズさせて自分のいいところを出せるかっていうところを普段から授業で練習しておけばいいのかなと思っています。
豊嶋:最近、勉強できない子って何ができないのかなって考えるときがあって、例えば学級日誌なんかを見ていても、「楽しかった」「面白かった」「つまらなかった」の数パターンで、日本語ですら言葉にすることができない。やっぱり言語トレーニングを本当にしなければいけなくて、心を動かして出させてもっと深く掘り下げて、その掘り下げたところにどうやって表現すればいいかっていう段階的な指導がすごく大事だなって。中には日本語を一言でまとめちゃう子もいるじゃない、日本語で伝えられないものが英語で表現できるわけもないし、感じているんだけれども表現の仕方が昔の子どもよりも上手くないような気がしている。
工藤:上手いとか下手とかという判断がいいか分からないけど、我々の世代とはちょっと違うスタイルのコミュニケーションがあると思う。ゼミのLINEがあって、夜中のやり取りがすごかったんですよ。1~2分の間にすごい件数が来ているのを見て、なんでこんなハイスピードなのだろうと。まずは読んで考えるじゃないですか。一文にしても一言にしても、その反射の速さというのはすごいなあって思った。考えずに反射でやっているのかと思ったけど、内容的にちゃんとつながっている。瞬間的に浮かんだのをパッパッパッてやる力はたぶん我々よりは子どもたちの方が優れていて、慣れているものが違うっていう言い方が正しいのかもしれない。逆に言うと慣れているものからやらせるというのが英語教育の一つのスタンスだから、LINE的にさせた後、これよりもう少しフォーマルな場面にした場合「変だよね」ってことは気づくと思うから、それから普段のやり取りをもう少し形の整ったものにはめていくというようなことを今やろうと思っている。LINEの日本語見ていてすごかったから、コミュニケーション力がないというわけではないんじゃないかな。
豊嶋:プレゼンをやらせて、生徒たちの写真のやり方が上手いなあって思うんだよね。あと感情をLINEとかのスタンプに乗せるでしょ。ああいうのをイメージに乗せるのはものすごく上手くなった。LINEのスタンプ結構使うけど。あの場面でこのくだらないスタンプ送ってくるのかみたいなね。
工藤:それもコミュニケーションのひとつだから、それを認めてあげて、慣れているものと慣れていないもののギャップを埋めていく方法でやっていけばいいのではないかな。我々のイメージで捉えた時と違うかもしれないからね。
津久井:それはあるかもしれないね。自分のICTのイメージって、プレゼンテーションの時に何かをディスプレイして、DVDを見せる。あるいはプロジェクターを使ってスクリーンにパワーポイントなどのスライドを映す。でも生徒たちにとってのICTってLINEがスタートかもしれないしツイッターかもしれない。ひょっとしたら双方向の即時的なやりとりなどでも使えて、すぐに意見も集められるだろうし、フリーソフトを上手く使ってクラスの意見をまとめるのもすごく上手いんだよね。わざわざ小さい紙を持って行ってクラスで配らなくても、「先生もう意見の集約が終わってます」とか言われたりとかね。
工藤:学習者視点に立つのが大事じゃないですか。自分の授業では板書を写メしてもいいよって言ってるんです。そうするとする人としない人がいて、しない人は書くんですよ。書いた方が覚えるからと言い、写メを撮る人は書いていると先生の説明よりも書くことに集中しちゃうからと言っている人たちがいるわけです。学習者側が自分たちで判断して、この場合はICT使うとか何を使うとかね。
今日の話で「選択」というワードを出そうかと思っているのですが、今、大学生を教えるようになって「自分たちで選択する力」が大事かと思って、ゼミでどういう方法でやるかを選択させているんですよ。「ペアワークをやりたい?」あるいは「こっちの説明を最初に聞きたい?」というようなことを学生に選ばせる。「じゃあ自分たちで情報をまず先にネットで調べる?」あるいは「取りあえずグループで話す?」とかってやると、それなりに責任をもってやってくれる。こちらから見れば「本当はこっちの説明を先に聞かないと」と思うことはあるんだけど、それを我慢して少しやらせて「やっぱり先生のレクチャー最初に聞いた方がよかった」みたいなことをやることが大事かなと思うんだよね。
津久井:それは次からやっぱり聞こうってなるから。はじめから「いいから聞きなさい、聞かないと進まないよ」と言われるのとでは雲泥の差だよね。
工藤:アクティブラーニングも高校生くらいだと、やり取りして「どっちがいい?」みたいなことを一緒にやって授業を作っていけばいいんじゃないかなというところがある。学生が選択するから上手くいかないことも逆に沢山ある。だからこっちも寛容になった方がいいかなって思う部分もある。学生が選ぶ、あるいは選ばないって方法もあるかもしれないけど、その辺りちょっと高校とまた、最前線で高校生教えてるイメージが違うかもしれない。
豊嶋:ICTもさ、例えばICレコーダを全員に使わせるにしても、いろんな障害があって、全員に渡せないとか、携帯電話でICレコーダの機能がついているけど、携帯を持っていない子がいたりする。本当にいいICTは生徒の学習行動を変えるんだよね。また、Prezi【拡大縮小・回転・スライドなどの動きがあるプレゼン資料を作成するソフト】を生徒に使わせてプレゼンとかやらせるんだけども、フェースブックとかああいうので育った子たちにしてみれば楽しいようで、表現するために何時間もコンピューターと向き合うわけだよね。その間にこれをどうやって英語で表現しようとか考えているわけだから。道具を上手く使っていい活動と結び付けられると本当にいいアクティブラーナーに育っていくのかなということを最近考える。
松下:生徒が使う場合、課題研究などの発表を見に行くと、どうしてもコピペになって内容が伝わっていかないという問題があります。たぶん豊嶋先生はその辺の題材も上手く選ばれていたりするので、こういうことを伝えたいっていうことをレッスンにつなげながらやっておられると思うので、その部分を生徒が選びながらできているのだと思う。伝えたいことをどうやって伝えていくかという指導をしていかないといけないので、それにかなり時間がかかってしまう。
豊嶋:すごい時間がかかる。英語表現の授業で、グループでその教科書の中のトピックを使わせるんだけど、気づいたことは説明できても、そこに自分たちの主張を乗っけて、聞いている人たちにメッセージを伝えるということが難しい。大学生にも出来ない。一週間面談し続け、放課後とか昼休みとか全部面談で使うし、実はそれが一番苦労していること。伝えたいと思うものを作らせることが大変だと思っている。
工藤:そろそろ時間が無くなってきたので、次は津久井さん自身のお話を。
津久井:私は群馬県の国立中学や公立中高一貫を経験し、行政での経験も2年間あり、現在は国立高校で教え、色々な経験ができたことはすごくよかった。振り返ってみて自分は19年目くらいですけどやっぱり自分で選択したことが2回あって、選ぶって大事なんだと思っている。ふつう群馬県でずっとやっていれば選ぶことはないんですよね。希望を出すとかあるかもしれないけど。任された場所で全力を尽くすということが非常に大事なことで、逆に言うと選ぶということがほぼなかった。自分が地元の大学を出て教員になっているっていうのもあるんだけど、そういう経験を通して、一番今色々な事を比較的頑張って取り入れようとしているのかなと思う。
豊嶋:行く場所、行く場所でSELHiやったり、研究主任やったり、SGHやったり。何かしら降りかかってくる星のもとに生まれてきたから、きっとこの先も動くと何かしらついてくる人なんだなって思うよね。(笑)
津久井:アクティブラーニングだったらその視点に立った指導というように自分の授業をくくりなおした時、きちっと言語化できていないと人に言うのも恥ずかしいし、「これはアクティブラーニングを意識した授業なんです」とも言いずらいので、まず自分の授業をもう一回見直そうっていうのが今すごく気になっている。自分の授業をどうやって振り返るか。「あそこをああすれば良かったなあ」みたいな振り返りはあるけれど、もうちょっと冷静に落とし込んで「ここはこうしようかな」とか、「次はどうやってみようか」という、教師側のアクティブラーニングとなっている。あとは英語のスキルなどを身に付けさせるとなると授業外が大事で、塾や家庭学習も含めて生徒に何をやってくるかを選択させるのは、高校生はありだと思う。
工藤:最近、研修会でも家庭学習を取り入れているよね。
豊嶋:本当に家庭学習はすごく大事で、生徒たちに言うんだけど。年間で百何時間の英語の授業って実は24時間で割ったら、たった四日分とか五日分にしか相当しないわけだよね。仮に留学五日して英語が出来るようになったらそれはもう奇跡的なことで、結局学校の授業をきっかけにいかに家庭学習や授業外の時間でどう勉強させられるかっていうのが大事で、家庭学習とうまく組み合わさった時に子どもたちが本当に伸びていくのかなって思う。自学ノートとかもそうかもしれないし、家庭学習も込みで授業スタイルをいかに作っていくかが本当の意味で子どもを伸ばすのかなって思う。
松下:ただちょっと一点だけ。選択ということで、生徒が選んでやった時に、生徒個人が家庭での時間をとられているわけで正しい方法でしたいという気持ちにはなるわけですよ。
じゃあ選んでごらんって言った時にどれが正しいかっていうのをすごく知りたがると思うんですよね。あまり効果的でなかったことが後々わかったときに、生徒からすると「先生正しい方法教えてくださいよ」ってなってくると思うんですよね。そこの部分を高校生1年生とか2年生のうちに形を教えてからやろうかとか、自由度があるのをまずどの時点でやっていくのか、私もその家庭学習が課題だったのでそこはすごく悩んだんですけどね。
津久井:やっぱり高1とはいえ小学校高学年から英語学習歴があるわけだから、おさえるべきところも、この学習は例えば音読が必要だということをきちっと伝えなきゃだめだと思うんですよね。音読の仕方って、shadowingとread & look upで鍛えようとしている力が違うみたいな。選択させるときに、本当は正直「あなただったらこっちでしょ」というのがあるんだけど、あえて選択をさせる。幅の狭い選択をさせるところと、完全フリー、「日記書くのであれば何の日記でもいいよ」みたいに。量的に縛りがあったとしても、少ない量を選択していても英語が使えないというわけではないわけだから。表現するものが入っていればいい。まあ塾のプリント3ページ貼って終わりはダメだよとは言うけど。松下先生が言われたように形を作っておかないと、自由にやるのは楽しいけど、なんでも自由にって言われると意外と楽しくない。やっぱりルールとかこうやると効果的だっていうのが当然ないと。そこが難しい。
豊嶋:しかも子どもたちは即効性を求めるじゃない。模試とか言ってすぐ数値に現れるものを求めるから。阿野幸一先生(文教大学)が言うんだけど、「英語って下りのエスカレーターを逆に昇っていくようなものだから、ちょっと止まればすぐ戻ってしまって、頑張り続けないと次の階に行けないと、だからやり続けなさいって」。でも子どもたちからするとそこまで待てないところがあって、そうするとこっちが提案するものをなかなか続けてくれない。塾とか予備校で、模試とかで文法問題などの成績がすぐにパッと出るとそれが達成感みたいな感じになってしまって。実は力がついていない。たまたま一個の知識を捕らえただけで、それを力と勘違いしてしまったりして、そこが高校だと難しいなって思うね。だから家庭学習を自由にやってきなさいというと問題集の穴埋めしかやらなかったりする。
津久井:前の学年、その前の学年、さらにもうひと世代前のところからの学習効力みたいなものをちゃんと追っていて、まあ簡単に言えばこういうノートの使い方を高2の時にしていた、高3の時にこうしていたっていう子が例えばどういう英語力を持っているのか。進路としてこういうところに進んだ子はこういうものを作っていたんだよと言うものを、データベースっていうと大袈裟だけどちゃんと持っていると良いよね。
豊嶋:モデルを提示してね。
津久井:先輩たちはこういうやり方してたとか、こういうやり方してた子だって模擬試験でこうだったよっていう例がないとやっぱり厳しいよね。いきなり自由って素晴らしいでしょとか、選択って素晴らしいでしょと言ったって、その時は思うかもしれないけど。例えば、ABCという選択肢でCにしようって思うかもしれないけど。本当はAを選択した方が力がついたのかなみたいになるとね。
松下:なので、どちらかというと前の学校では学年で取り組んだひとつの方法として、まず選択するときに一人は心細いので、一時間家庭学習の時間っていうのを授業中に作ってしまって、ペアとかで考えながらここをこういうことできるなって、次の時間にこういうことやらなくてはいけないから、じゃあ今まで練習したやり方はこれだけあるよね。その中でどれとどれを使ったらこの50分間にできるようになって、自分たちのペアはどういうやり方をして、その効果についても話し合うっていうのを僕らたちの前でやって同僚のアイディアだったんですけど。それはすごく安心できるっていうか。
津久井:やっぱり生徒同士は共有したいんだもんね。そういう時って学期に一回くらいになっちゃうんだけど、フリーなときにお互いに見せると、これは絶対やらなきゃダメっていう縛りはあるけど、フリーなところを見せ合わせると、こっちの予想を超えるようなバリエーションでやってくる。それを四つか五つならべると、共通項があったりするんだよね。必ず復習入れているページがあって、「私のこの3ページあるうちの1ページの復習って他の人もやっている」、それで授業でspeakingやったから家ではwritingするのはわりと大事だということに気づくんだけど、それを先生に言われるよりも価値があって説得力もあったりするからね。
豊嶋:確かにそうだね。同じこと言っているはずなのに、先輩の発言だと、スーッと入っていくっていうか・・・。「いつも言ってるじゃん」って思うんだけどね。
津久井:計画性はなかったんだけど、タブレットを持って取りあえず録画してみようと思ったときがあって、それがたまたまsummary telling だったんですよ。それを次の年にsummary telling をやるとき、それを見せたらゴールの共通理解が早くて、もう全然違ったなって思った。
豊嶋:去年高3生にやらせたプレゼンテーションがあって、発表している生徒に自分たちのプレゼンがどれだけ分かったか、内容理解問題や単語帳を作ってもらって、それを今年の子たちが2学期にやるんだけど、まあ先輩のを見ながら結構厳しい評価を入れてて、実は何もしなくても勝手にペア作って相談しているんだよね。だからやっぱり先輩の記録を残して次にどう生かすかというのはすごく大事、すごく波及効果を持ってるなあって思う。
松下:例えば津久井先生、自学ノートとかを次の学年の子に見せることってしているんですか。
津久井:英語の教室があると一番いいんだけれども、ない場合は自分の担任の教室に置いておくので英語通信として「どの教室に去年の先輩のノートがあるから自由に見ていいよ」って伝えている。
松下:学年のバラエティーをそろえて?
津久井:本人の自尊心もあるから失敗例も入れるわけにはいかないけど、でもページの中にもちょっとした失敗例はあってもいいなあと思っていたり、わりとバリエーションがあって、かつこちらの広いストライクゾーンに入っているものは置かせてもらってそれを見せている。ノートの見本をコピー機のスキャナー機能に読ませ、専用のUSBメモリーをクラスごとに作っておいて、あと全部ストックしちゃう。そこから選んでどのタイミングで生徒に共有しようかなという感じ。
豊嶋:コピー機がザーッと全部一気にスキャンしてくれてね。生徒の作品を全部取って去年生徒たちに書かせたものも全部持っている。記録をとって分析をして振り返ると一回目と十何回目のwritingが全然違っていて、最初はI like~だとかI think~ばかりの英文なんだけど、最後の方になってもうちょっと知的な英語を書かせたいというときに「Iで始めるのをやめてごらん」と言ったら、だんだん良くなってきて、さっき言った段階的に書き方を教えるっていうのもあったけど、生徒たちが書いているwritingの欠点を見つけて次に「じゃあこうやってみよう」って言うと本当に良くなっていくなあって思っている。
津久井:今みたいに記録取って気づいたところがあって、例えば「Iばっかりだな」という時にはこういう言い方があるよってアプローチもありだし、逆にその過去の記録があるんだったら、この三つのポイントについては、はじめのところできちっと提示してそこから始め、違う選択の中で新たな指導のポイントを見取って、それでどんどんrefineしていくために両方が必要なんですね。どれを最初に出して、始めるかというところで指導力向上というのが大事だなって気づいた。
工藤:時間が過ぎてきたので。10年前にやったらたぶんこんなに生徒の話沢山出てこなくて、教える側の視点が強かったと思うけど、最近はそれなりに余裕が出てきたから生徒の視点で見たり、家庭学習というポイントだったり、あるいは生徒のやっているものを見て「次の年はこうしようか」というようなことを話したけど、これも教員のディベロップメントの一つで、今我々はそのステージにあるということですね。また10年後にやってみたいね。20年後定年間近。
豊嶋:いやいや。いなくなっているかも。過労死してるかもしれない。(笑)
工藤:まあ定期的にこういうことが出来れば面白いかな。ぼちぼち終わりにしたいですけど。まあ今日はこういう機会があって非常に楽しかったです。今日はこれで終わりということで。少しどころかもっと話したかっただろうけどまた。
津久井:授業と同じだから。もっとこうしたかったなというくらいで宿題。
豊嶋:一番大事なのは欲張らないことだね。授業もあれもこれもやると失敗する。
工藤:これで終わりにしますがよろしいですか。
全員:はい。ありがとうございました。
(文責:教員研修部)