ELEC出前研修レポート
駒沢学園女子中学校・高等学校
「英語表現1の授業改善」
ELEC出前研修
‐実際の授業を踏まえた研修や指導助言、専門家が継続的に学校を訪問‐
ELECでは2015年度より英語科教員の指導技術向上のために、求められる知識や技術を提供する「ELEC出前研修」(授業改善のための専門家派遣事業)を実施しています。英語教育の専門家(大学教授や教員研修指導経験者)が継続的に学校を訪問し、先生方の疑問・課題と実際の授業内容を踏まえた指導助言や研修を行っています。ELEC通信では、実際に出前研修を実施した学校の事例をご紹介していきます。
※当面の間、毎年申請のあった数校に対して講師謝金や旅費をELECが負担して、無料で研修を実施しています。応募等の詳細は出前研修のページをご参照ください。
2016年度、ELEC出前研修実施校の一つである駒沢学園女子中学校・高等学校の事例を報告する。
文法が定着していない生徒に対する授業、特に英語表現1で、文法力アップおよび話したり書いたりする力の養成をテーマに、全3回の研修を進めている。研修講師は、東京家政大学教授 太田洋先生に担当していただいた。
2016年8月某日、高等学校の一教室で第二回研修が開催され、中高の英語科教員8名が参加した。
研修は以下3点を中心に進められた。
- 初回研修後いかに授業が改善されたか発表
- 「文章の内容理解を重視した授業」:concept mapの作成を体験
- 各レッスンの到達目標の設定の仕方・評価の仕方
1.初回研修後いかに授業が改善されたか発表
初回研修での「i-1 を意識する」(※i-1:生徒の現在のレベルよりもやさしめの文章を追加教材として扱う)「生徒にとって身近な題材を使う」という太田先生の助言を踏まえて実践した教員は、「できるようになった。顔つきが変わった。」と報告した。前回、「絵を使って教科書本文の内容をretellingさせている」と報告を受けて、刺激を受けた複数の教員が絵を活用したretellingを取り入れたという発表もあった。
2.「文章の内容理解を重視した授業」:concept mapの作成を体験
Readingにおいて、精読も大切だが、入試の文章量が増えている中、それだけでは入試に対応できなくなっている。概要を掴むことが求められるが、その力をつけるために太田先生はconcept mapを活用することを提案された。
concept mapとは、読んだテキストの内容を、キーワード・矢印や線などを使って図式化したものである。
- <concept map作成のポイント>
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- 本文に書かれている情報を記号などを用い、極力簡略化して、作者の考えを理解しやすいようにする。
- 本文を読み、感心したところに下線を引く。
- キーワードをつかみ、それを矢印等でつなげ、作者が伝えようとしていることをまとめる。
- 本文に書かれている情報を記号などを用い、極力簡略化して、作者の考えを理解しやすいようにする。
- <concept map作成上の利点>
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- 書くべきキーワードなど、ある程度押さえるべき要点はあるが、正解というものはなく、絵が得意な人は絵を添えるなど、書き方は自由。
- concept map作成は教材研究としても有効で、「この部分はoral introductionにしよう」、「ここはcomprehension questionにしよう」、「( )にして穴埋めにしよう」、などと授業計画に活かすことができる。
- 教員が作成したconcept mapは生徒のworksheetにもなりうる。
- <concept map作成を授業で行う場合>
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- 生徒にconcept mapを作成させるのが難しい場合は、以下のようなステップを設定することで取り組みやすくなる。
- 教員がconcept mapを作って一部を( )にしておき、内容理解の質問に答えると( )が埋められるようにしておく
- 教員がconcept mapを途中まで作って、残りは生徒が自力で作成する
- 生徒は慣れてくると一から全部concept mapを作ることができるようになる。
- アウトプット活動として、concept mapを見ながら話したり、書いたり(retelling)することができる。
「概要を捉えてみよう」と言っても、生徒は難しく感じるかもしれないが、教員が「concept mapを作る」「内容を絵で表す」と指示すると、生徒は訳を作るのではなく、要点を掴むような読み方になる。
研修当日は、簡単な説明の後、実際に先生方もCOLUMBUS2 Let’s Read3のBamboo Can Do!のテキストを読み、concept map作成を体験した。英語教員はどうしても言語的な側面に注目し、指導者としての視点で長文を読んでしまう。太田先生より「bamboo」というキーワードから始める、という条件だけ与えられ、あとは各先生が自由に、絵を入れたりしながら、それぞれのconcept mapを作成した。
concept mapを作成したことで、日本語を介することなく内容理解が深められることが確認でき、今後の授業改善につながった。
- 生徒にconcept mapを作成させるのが難しい場合は、以下のようなステップを設定することで取り組みやすくなる。
3.各レッスンの到達目標の設定の仕方・評価の仕方
研修の後半は、到達目標・評価がテーマ。資料として、2学期以降の英語表現の各レッスンの到達目標と評価基準A~Dの案が出される。評価基準は、Cを大半の生徒に到達してほしいレベルとして想定している。
それに対して太田先生からは、評価基準だけでなく、Cとしての成果物のモデルとなるend-productを1つ作成したほうがよい、という助言があった。end-productの作成を勧めるのは、文言だけの評価基準で終わらせず、授業での指導ポイントを具体化できるからである。end-product を基準に、必要な文法、語彙も明確になり、授業で押さえておくべきポイントがALTも含め、他の先生と共有できる。
英語表現1 Lesson5の目標である「レストランでの会話を組み立ててALTに披露する」について、実際にペアでend-productとなるレストランでの会話例を検討したが、短い時間の中で様々な意見が出ていた。太田先生はこのように議論を経てend-productを作成し、評価基準を摺合せることが重要だという。
4.第二回研修を終えて
研修後、参加された先生から「明確な目標のイメージを持つことで授業のアプローチも変わってくる。」「生徒と同じように自ら課題をとき、最終の目標を明確にし、そこから授業の展開を考えることが大切」という感想が寄せられた。
駒沢学園女子中学校・高等学校の出前研修では、生徒が英語を本当に使えるように、よりよい授業やテストの在り方を求めて積極的に提案・試案を作成している点が印象的だった。具体的な試案を元に太田先生の助言を受け、英語科の先生たちで率直な疑問や意見を出しながら試案を発展させて、授業改善を進めている。
(文責 ELEC教員研修部)