[ELEC出前研修レポート]
調布市立中学校教育研究会英語部

「自立した学習者の育成のためにアクティブラーニングを活用した授業の展開を目指す」

ELEC出前研修

ELECでは2015年度より英語科教員の指導技術向上のために、求められる知識や技術を提供する「ELEC出前研修」(授業改善のための専門家派遣事業)を実施しています。英語教育の専門家(大学教授や教員研修指導経験者)が継続的に学校を訪問し、先生方の疑問・課題と実際の授業内容を踏まえた指導助言や研修を行っています。ELEC通信では、実際に出前研修を実施した学校の事例をご紹介していきます。

2016年度ELEC出前研修実施校の一つである調布市立中学校教育研究会英語部の研修事例を報告する。

調布市立中学校教育研究会英語部には小・中学校の教員合わせて約70名が所属する。

研修の目的は調布市立(小)中学校における英語科教員の指導技術向上のために英語教授法の理論及び実践に関する研究を深めることであり、全4回の研修を希望した。

研修のテーマは「自立した学習者の育成のためにアクティブラーニングを活用した授業の展開を目指す」。4回の研修内容は以下のとおりである。

第1回(2016年7月22日)

講師:大東文化大学准教授 淡路佳昌先生

  • 自立した学習者育成のための視点、アクティブラーニングの具体例や手法、ICTの活用法や特色ある教授法の紹介について講演
第2回(2016年10月12日) 

講師:和歌山大学教授 江利川春雄先生

  • 研究授業参観、研究授業への指導・講評及び講演
第3回(2016年11月9日)

講師:和歌山大学教授 江利川春雄先生

  • 模擬授業に対するクリニック
第4回(2017年1月11日)

講師:和歌山大学教授 江利川春雄先生

  • 模擬授業に対するクリニックと総括

以下に第2回目の研修の様子をレポートする。研修参加人数は42名(中学校28名、小学校12名、その他2名)であった。

1.研究授業の参観

研究授業は調布市立第五中学校 一年生のクラスで行われた。

  1. (1)単元名 Lesson 6 My Family New Crown English Series 1(三省堂)
  2. (2)単元の目標 
    • ・身近な人を口頭で紹介する
    • ・紹介された人について、質問する

2.研究授業への指導・講評

江利川先生は研究授業参観中、特に3名の生徒に注目し、学びの様子を撮影されて いた。研究授業の指導・講評では、録画された映像を示しながらポイントを解説してくださったため大変わかりやすかった。研究授業はテンポよく、全ての生徒が授業にしっかり集中しているようだったが、江利川先生が注目した3名は途中机にうつ伏してしまう姿が記録されていた。江利川先生によると、生徒の集中が途切れるのは教師からの一方向の説明のような受動的な学習時に見受けられることが多く、ペアワークやグループアクティビティなどの能動的な学習をしているときには起こりにくいという。そのため、先生からの一方向の説明はなるべく短く、5~10分以下に抑えた方がよいとのアドバイスがあった。研究授業の映像でも、ペアワークが始まった途端に机から起き上がり、生き生きと活動し始める3名の姿が印象的だった。

その他、研究授業に対して次のようなアドバイスが示された。

研究授業のペアワークは次のような流れで行われた。

  • 左のハンドアウトが配布され、生徒は身近な人を1人選び、顔を描く。人物の手の上に、関係のあるものを1つ描く。
  • ペアを作り、Aはその人物の名前を紹介、Bはその人について質問する。
  • 自由にペアを作り、紹介し合う。

この活動について江利川先生は、グループで以下の活動を行うことを提案された。

3.講演

江利川先生は講演では次の点に触れられた。

(1) 次期学習指導要領の方向性について

中学校で学ぶ語彙数が現行の1200語から1600~1800語へ大幅に増加、授業は英語で行うことが基本となるなど、到達目標が一段と高くなる。

(2) アクティブラーニングについて

従来の講義型の授業では知識は「内化」されるにとどまるが、アクティブラーニングでは問題解決や対話など、知識を「外化」する活動を通じ、知識を再構築し、知識の「内化」を深めることができるという。

「協同学習」が従来の「班学習」と異なる点について、江利川先生は次の点を挙げた。

  • グループのメンバーは自分と仲間の学びを最大限に高めようとする。
  • 各自が役割分担し責任を果たすが、多様性を尊重し意見の一致を求めない。
  • 個人では到達困難な課題を仲間と達成することができる。
(3) 絆ホルモン「オキシトシン」について

「協同学習」の際に、グループの子どもたちがお互いに認め合い、触れ合い、話し合い、共感し合うことによりオキシトシン(別名「絆ホルモン」)の分泌が活発になる。それにより子どもたちの情緒が安定し、集中力や学習意欲が向上する。「アクティブラーニング」を授業に取り入れるのは難しいと思われるが、「部活のような授業」をイメージするとわかりやすいと江利川先生は話された。

また江利川先生が大阪で行った学校改善取組の実践例を映像で紹介してくださったことで、参加された先生方は「アクティブラーニング」の学校改善における効果を実感することができ、大きな拍手で第2回目の研修は幕を閉じた。

最後に研修実施校担当者のコメントからの抜粋でこのレポートを締めくくりたい。

  • 「アクティブラーニング」に必要な生徒同士の「つながり・信頼・共感」は授業内だけで形づくるものではなく、通常の学校生活の中でこそ基盤を作っていくべきものであること。
  • 誰一人として見捨ててはいけないという、授業づくりの基本をもう一度呼び起こしてくださったこと。

この2点は、私たちにとって原点回帰のきっかけとなるものでした。

(中略)

とても貴重で充実した時間、具体的で丁寧な講演に深く感謝いたしております。

(文責 ELEC教員研修部)