[2017 ELEC座談会] 「次期学習指導要領を見据えた小学校英語教育の在り方」

[2017 ELEC座談会]「次期学習指導要領を見据えた小学校英語教育の在り方」

右から
谷 恭子先生 (東京学芸大学教育学部 教授)
小田 佐和子先生(東京都中野区立美鳩小学校 主幹教諭)
小林 美音先生 (埼玉県所沢市立美原小学校 校長)
権田 伸子先生 (東京都新宿区立淀橋第四小学校 校長)

平成29年10月29日(日)、ELECにて、東京学芸大学の粕谷恭子先生に座長を務めていただき、4名の先生方による座談会を実施しました。今小学校で直面している課題や、将来を見据えた方策などを話し合っていただきました。今後の参考になる部分が多くありますので、小学校英語教育に携わっている方はぜひご覧ください。

小学校英語教育の現状 

【粕谷】新学習指導要領が告示されて、新しい英語教育の全容が見えてきました。そのことについて小学校の現場の皆さんはどのように受けとめておられるのでしょうか?

【権田】校長の立場からすると、授業時間の確保、教科選定、時間割編成が大きな問題です。5, 6年生が1,015時間、このままいくと4年生も1,015時間で、週5日でやらなければいけないとなるとかなり負担になります。ゆとり以前に1,015時間以上やっていた時期もありましたが、その時は土曜日も含めていたので、先生方の負担がすごく大きくなります。
それから、教科となると、まず教科書があり、評価評定をする、ということが大きな特性です。小学校は小学校全教科の免許ですが、例えば、図工や音楽の専科の先生方は中・音楽、中・美術をお持ちの方がほとんどです。英語もこのような専門性が必要なのではないかという不安が多いですね。

【粕谷】一緒に働いておられる現場の先生たちからも、そういった意見は出ますか?

【権田】外国語が教科になると、英語で話さなければいけないのかとか、自分自身の英語力をどこまで求められているのか、専門的な教育を受けていない中で、自分の今の力で大丈夫なのだろうかという不安の声や、1時間の授業をどう流していったらいいかという悩みを聞きます。
 そもそも新しい学習指導要領で求められている英語の目当てをまだ読み込んでいない状況なので、その中身を知る中で不安は解消されていく部分もあるかもしれないのですが、今そこが難しいところですね。

【小林】今、権田先生がおっしゃったように、課題は負担感と不安感だと思います。負担感に関しては、校長の立場ですとやはり時数の確保が非常に難しい。これだけ教員の負担軽減という話が出ている中で、やはり日課を見直さなくてはいけない。例えば、モジュールを入れざるを得ないとすると、どのようにモジュールを入れていくか考えていたところ、新学習指導要領総則の解説の中で、3・4年生の外国語活動ではモジュールはなじまないというのが出てきて、モジュールは国語か算数で行おうか、どうしようかと、振り出しに戻りました。小学校では下校時間が15分ずれる、始業が15分早くなるのは地域を巻き込んでの日課の改定になるので、学校長の立場としてはそこが大きな問題です。また、モジュールがいいのか、45分授業がいいのか、各々のケースの流し方が見えない不安感もあると思います。
 一方で、高学年で経験をしてきた先生方は、気持ちはそんなに後ろ向きではないのですが、外国語活動に携わる経験の少なかった1~4年生の担任の先生方は授業の組み立て方や、全部英語でやらなきゃいけないのかという不安感があると思います。

【粕谷】なるほど。そうすると、少なくとも外国語活動で5, 6年を教えられた経験のある先生方と、全くない先生方とでは、管理職の方の目から見て不安感の質が違っているという感じですか?

【権田】そうですね。本校は今年、新宿区の教育課題のモデル研究校として外国語に取り組んでいます。次期学習指導要領にあわせて45分の授業の形態と、短時間学習で15分のモジュールをどう使えるかという研究をしています。ベーシックタイムを設け、5, 6年以外は国語、算数、英語も入れて、基礎的な力をつけることにしたのですが、このことで、放課後遊びを削らざるを得なくなりました。5, 6年は2学期から英語の短時間学習の指導計画を作りはじめたのですが、映像教材や音声教材が欲しいという教員と、“Hi Friends!”に沿った内容を短時間学習でどう組み立てられるかという研究をしたいから、映像教材は要らないという教員と分かれてしまいました。
“Hi Friends!”で習ったキーフレーズの反復練習や、やりとりの練習、メインアクティビティーのゲームを繰り返しやることによって、かなりクリアできそうだという考え方と、とにかくICTの活用を図り、ポンと押したら最初の2分は歌、次の5分は映像でゲームのような形で言葉を覚えるというように、映像で組み立てをしたいという教員と分かれました。結局、本校では映像教材を買いませんでした。“Hi Friends!”についている映像や、CDで歌を使って、5, 6年は結構うまく回るようになりました。9月から始めたのでたった2カ月ですが、5, 6年生の担任は、45分授業を1回やっていたときより、モジュールで短時間の学習で慣れることによって、授業での子どもの取り組みがすごく意欲的になった、自信がついたと言っています。文部科学省からは「3, 4年生は、1単位時間45分で指導すること」となっていますが、もう少し柔軟に考えられないかと思います。語学を学ぶにはやはり頻度、何回聞いたか、何回言葉を言ったかが自信になっていくと思うので、来年からはそこが少し苦しいところです。

【粕谷】短時間での取り組みの難しさについての報告もありますが、淀橋第四小学校では成果が出ているのですね。ベーシックタイムというのはどのようなものですか?

【権田】5時間目前の1時30分から1時45分の15分間です。今年はモデルケースで、時数をカウントしないので15分だけ下校が延びたのですが、来年5, 6年生がモジュールをやる場合、5時間目とその間に5分、移動の時間をとらなければいけないので、また5分下校が延びることになり、4年生以上は朝8時15分に登校して、下校が3時25分になってしまいます。

【粕谷】遊びもなく、ということですね。

【権田】週3日はそういう生活になります。それをしないで文科省の言うように、夏休みを使ったり、年35時間と言っても年42週くらいはあるから、適当にちりばめたり、学校のカリキュラムマネジメントでどうにかしてくださいと言われても、その範疇は超えてしまったのかなという感じです。

教員の英語力や英語授業担当に向けた不安への対応

【粕谷】今、管理職のお二人からは不安があるのではというお話でしたが、職員室のお仲間たちはどうですか?

【小田】勤務校では若い先生が意欲的に研究授業に取り組まれています。先生方はご自分の英語力に不安があるとおっしゃっていますが、小学校で子どもたちに身につけさせたい英語は、せいぜい中学校ぐらいの英語力があれば何とかいけるような内容だと考えると、英語の力というより、声に出して表現するところに不安があるのではないかと気づきました。
若い先生が、英語が好きだったり、得意だったりして、研究授業をされているのを見ているうちに、こういうふうにしてやればいいというのは少しずつ広がってはいくのですが、次に1, 2年の担任になると、なかなか実践できる場がなく、5・6年の先生だけが外国語に関わることになります。英語を教えることが心配な先生は低学年がいいなどと、一生懸命やった研究がなかなか広がっていきません。
私自身は5, 6, 5, 6年、そして今、3年生を担任して、英語の教育に携わって5年目になり、小中連携で中学校に行く機会があります。中学校の先生方からこの5年間の取り組みについて、「耳がとてもよくなってきている」、「単語を聞き取る力というのは格段に上がりました、これは小学校での外国語教育の成果だと思います。」とおっしゃっていただきます。
音声教材や映像教材だけに頼ったり、ゲームに偏ったりした授業をしても、たくさん言葉を聞く機会をつくってくださった成果が出ているのだと思います。

【粕谷】外国語活動が始まって5,6年がたち、その蓄積があるということで急に教科になるより少しは不安の解消に寄与していますか?

【小林】はい。本校でも5, 6年で外国語の経験のある先生は免許状更新講習で英語の講座をとってきましたなどと、とても意欲的です。「アクティビティーをやっていると、子供たちも楽しそうだよね。」ということを実感として味わった先生が、やってみたいという意欲にはつながっていると思っています。

【権田】新宿区では英語活動が必修になる前、もう17、8年前から英語活動は全学年でやっています。ALTが仕切ってきたので5, 6年の担任をやっていても、最初のグリーティングと最後のグリーティングを担当するだけで、中身はお任せ、教員が自分でやることを考えて学ぶということはほとんどありませんでした。ALTの先生にやってもらっていたところを、担任がT1をやる形でどう連携していくか現在考えているところです。いざ自分が仕切って発音するというところで、自分の発音で子どもたちに話してしまっていいのだろうかという不安があるようです。ただ、ALTの先生もいろんな国の方がいて、英語にもなまりはありますよね。だからたどたどしい英語で、日本人っぽい発音でも先生が一生懸命やっているのがわかればいいのではないかと思います。

【粕谷】新しい学習指導要領では、発音に関して「標準的な」というところが入りましたので、基本的には中学校に準じることになると思います。ただ、それがあまり、先生たちを縛ったり、苦しめたりするようなことになってはいけない。

【小林】発音が心配というのはとてもよくわかるのですが、私自身が中学校で教えてきた中で、自分自身も含め、中学校の英語科教員の全員が全員、パーフェクトに標準的な英語をしゃべっていたかというと…。だから、そこをあまり気にし過ぎる必要はないと思います。もちろん実技なので、上手になるように、実際に声に出して言ってみる経験は必要だと思います。

【粕谷】私も研修に行って気づいたのですが、3~4語程度の、紙の上なら書ける文が口からは出てこないのです。毎日、This is a desk.とかThis is water.とか、一言言っていくことで、慣れていけるのかなとご提案はしています。

【権田】子どもに難しい単語を使って長い話をするわけではないから、なるべく校内研修でも、「教員が話す構文は3語まで、短く話すといいですよ。」とか、クラスルームイングリッシュを幾つか挙げて、「このような時は、このような言い方を使うといいですよ。」という実技研修をしています。

【小田】先程も担任の先生がT1で授業をするというお話がありましたが、発音が大丈夫か不安なときに、ALTの先生に発音してもらうのもいいですが、発音が上手すぎて子どもたちが聞き取れないことがあります。そのときに担任の先生がもう少しゆっくり言ったり、ALTの先生のまねをして言ったりすると、子どもたちが捉えやすいことがあります。
担任の先生が楽しそうにしていたら、子どもたちも英語が楽しいと思うので、やはり担任の先生が片言でもいいので一生懸命使おうとしている姿、これを見せることがほんとうに大事だなと思います。

カリキュラム・マネジメントについて

【粕谷】不安が多いながらも今の段階で試行錯誤していることや、何とかなりそうな事例なども上がってきました。ここまで出た話の中でも時間の取り方というのは、皆さんにとって大変大きなことだと感じました。 時間を取るためには、余裕がなくなることを覚悟しないといけない感じですか?先生の負担ももちろんですが、例えば放課後遊びがなくなることは、子どもの発達にとっても小さなことではないですし、時程を15分、前に倒したり後ろに倒したりするのも地域を巻き込む頭の痛い、複雑なジグソーパズルです。限られた時間の中で気をつけなければいけないところや、具体的にこんなことができたとか、また教員という立場で希望することなどを、お話しいただけたらと思います。

【小田】私の勤務校では今年度に限り3, 4年は余剰時間から20時間を外国語教育に充ててくださいと区から言われています。5, 6年は35時間のまま、特に何も触れていないです。3年生は必須が年間945時間です。実際には年間42週あるので、5年前に3年生を持ったときは1,000時間ぐらいやっていました。そうすると余剰時間が5、60時間ぐらいあるので、国語で漢字をやりたいから、国語を多目にやったり、そのときの研究の特活で、学級の時間が10時間ぐらいオーバーしていたり、いろいろなもので埋めていって年間全部クリアしました。

今年も同じ3年生を持っていて、おそらく余剰時間が50時間ぐらいはあるのではと思っています。そこから20時間、外国語に流れたとして、残りの30時間を他の教科に分けていくと、確かに前ほど余裕はありませんが、何とか頑張って、時間内におさめようという努力をしているところです。
また平成30年度に関しては、余剰から5時間とって、残り15時間は総合の学習から15時間もらうということになっています。そうするとモジュールや放課後の時間を壊さずに外国語の時間を確保できることになります。
高学年に関しても来年は35時間プラス総合的な学習から15時間もらって、トータル50時間にしましょうと言われました。でも、最終的には70時間にしなければならないので、また20時間どこかを削るか、モジュールを足すかというのが、現在の具体的な対策です。

【粕谷】それは、区のほうで各学校に、こういうふうに、ここから時間をとりなさいと指示があって、短時間でやるか、45分でやるかは各校の判断でということですか?

【小田】今の勤務校では45分でということになっています。

【粕谷】なるほど。学校は自治体に決めてほしいし、自治体は都道府県に決めてほしいしということですね。

【権田】新宿区は移行期の15時間、総合からもらうということはやらない、総合は減らさないということです。

5, 6年は50時間以上やってくれといわれているので、ALTがつかない残り15時間は、モジュールで各担任や学校の中でやりくりしてやってもいいのですが、3・4年はALTがついて35時間、週1単位実施する予定です。4年生にモジュールを入れた場合、いま週28時間あるので、外国語活動を短時間学習にできないとすると、どの教科のどこを削っていくか悩むところです。総合は削れない、国語力もつけていかなければいけない中で、国語をモジュールにするのか。モジュールは入れなければできないのか。もしくは単発で水曜日の午後に6時間目を入れようか。月、火、木、金を6時間にし、水曜日を会議の日とし、水曜日で調整する案もでています。しかし、来年、計算すると月曜日が35日しかないので、そこが削られていくと苦しいです。先程お話に出た余剰時間についてですが、新宿区では方針として各学年、40時間程度の余剰時間を確保していました。新型インフルエンザが出ると、1週間近く休まなければいけない、これが11月と2月に2回あるとすると授業時数が届かないということです。現在はその中でさらに余剰で20時間、英語をやっているので、4年生はきちきちです。今、実際35週で計算していくけれども、実質時数としては1,015時間ぐらいできているので、計算上は大丈夫なのですが、計算どおりにはいかないです。

【粕谷】カリキュラムをデザインするということですよね。マネジメントという言葉になっていますが、自分の学校の子どもたちにこういう力をつけたいので、そのためにこういう時間繰りでやるのですという、英語がきっかけになってどうしようということを前向きに捉えれば、いい機会にはなっているのかとも思いつつ、やはり大変なところもあるかなというところですね。
やはり1年生も6年生も、時程をころころ変更することは難しいですよね。

【権田】特に小学校の場合は全学年時程をそろえないと、専科の時間が組み込めません。モジュールが必要な学年、時数として数えなければいけない学年が、例えば4, 5, 6だとしても全学年、モジュールを入れるという形になります。

【小林】時間に関しては非常に頭が痛いです。所沢市では多分、一括してという方針を出さないと思います。各学校に任されている分、中学校区ではそろえるということが話題になっています。
総合から15時間削るのは、本校ではおそらくしないと思います。15時間、どこかで生み出そうという形で、来年は夏休みと振替休業で日数を確保し、余剰が20から30。インフルエンザ、台風などでカットが入ってくると、プラスの15を加えて余剰が20から30出るような形で、15の純増はモジュールではなくということで、2年間をかけてモジュールをどこかで組み込むようなことを考えています。校内でも地域でも、習い事などの関係でも、時程がずれ込むというのは非常に大きいです。
教員の声も聞きながら、3, 4年生は国語をカットでもいいけれど、6年生の国語は週3時間で、それを刻まれたら厳しいと職員から意見が出てきているので、そのあたりをすり合わせながらというのを並行してやっていくようだなと思っています。

指導者の役割について

【粕谷】どこかがへこまなければということですね。それが、子どもをどう育てるかというところだと思います。
英語学習だけに特化したお話でいくと、頻度が上がるといいという考えがある一方、やはり学びなので45分授業で導入・展開という形もあり、バランスとしても4時間5時間あるうち1時間分が短時間で反復というのはいいかもしれないけれど、70時間のうち半分も短時間ではどうかという意見も聞くこともあります。そういうことを全部勘案して、先生たちの健康も維持しながらこの移行の2年間がどのように進めていくかで、次の2020年からのところに大きなともしび、ヒントになるのかなと思ったところです。
次のテーマですが、指導者についてはどうでしょうか。45分の授業にしろ短時間にしろ、担任の先生がお一人でしなければならない部分というのは出てくるだろうと思います。そうしたときに、ALTなどをはじめとする外部人材の役割と、担任の先生の役割をどのように捉えておられるか、また、担任の先生に自信を持っていただくためにはどうしたらいいかということでお話を進めていきたいと思います。
外部人材といってもいろいろいますが、外部人材と担任の先生とで、役割をどのように捉えておられますか?

【小林】所沢市は、ALTを中学校数分直接雇用していて、小学校には2週間に1回やってきます。一方で、外国語活動支援員が1日4時間勤務、これは週に2回来て、5, 6年生の外国語活動に入っています。基本的には英語を話すモデルとして活用していく形になっているので、英語の発音を聞かせる部分での活用がメインです。今後モジュールになったらこれは確実に入らないので、やはり担任の先生がお進めになることが中心になってくると思っています。そのときに、指導のコツや、先生に頑張って英語で言ってもらう部分などを浸透させていく必要があると思っています。
昨年度、市の研究校に指導で行ったときに、ベテランの担任の先生が色をテーマにした題材で研究授業をしてくださいました。CDをかけてレインボーソングを歌い、絵本の読み聞かせをやっていく。色がテーマなので、「What color?」となるべくたくさん言ってくださいとアドバイスさせていただきました。本番に数えたら「What color?」と89回、言ってくださいました。カメレオンさんの色がどんどん変わっていくという絵本だったのですが、「あれ、最初は何色だったっけ?」とつぶやいて戻りながら、「What color?」とずっと繰り返し言っていただきました。授業がとても上手な先生で、ソロでも十分コツをつかんでおられたので、授業力のある先生は充分対応できると思いました。

【粕谷】初めに「これだけはやろう。」という低いハードルを提示することが大切なのですね。何をやればいいか明確になっていると、気持ちもすごく楽ですし、英語の面でもあれもこれも言わなくていいというような状況になっていると、何とかなっていくかなというところですね。ベテランの先生の味は何ものにもかえがたいです。ALTの先生が来るときもあり、英語の音の質はある程度守られるから、自分が全責任を負うわけではないという気持ちがあるとやりやすいのだと思います。ALTや支援員さん、JTEは英語のモデルであると役割を明確にすることが大切だと痛感しております。

【小田】ALTの先生と打ち合わせが時間的にとても難しいです。できれば、打ち合わせの時間を少しとれると、スムーズに役割分担をお伝えできると思います。また、ALTの先生も、日本語があまりお上手でなければ、なかなか難しいことがお伝えできなかったりするところが、少し課題にはなっています。

【権田】小田先生が言われるように打ち合わせの時間がとれないです。うちの学校では週2日、ALTの先生が来て、1年から6年生までの英語の授業に入っていただいています。週2日教室を回って給食を一緒に食べてもらうのですが、そのときに打ち合わせをしたり、準備の時間や休み時間を使ったり、いろいろ苦労しています。
担任がT1をやっていくとなると、教材研究の時間も増えるわけですし、人的配置を考えると、英語は小学校でも専科の先生を入れていただく形をとっていただいたほうがいいのではと思います。最初にお話に出たように、教員の働き方改革も進んでいて、校長としても今、出退勤の時刻を確認しながら、遅い教員には「体、大丈夫?」と一声かけている中で、また教材研究の時間も増え、給食指導中にALTと相談してということはとても公には勧められないですよね。

【粕谷】やらなければいけないことが圧倒的に増え、入れ物は大きくならない中で知恵を絞って、大改革も含めて考えていかなければならないところですね。
専科というお話もとても魅惑ですが、東京都などは音楽や、高学年だと教科担任制をやっていますが、なかなか小規模校で人も増えないところもあり、学校での工夫でどうにかなるところと、自治体と都道府県と国とでやっていかないと難しいところもあると思います。
打ち合わせは契約の中にどう入れるかというところなど、学校ではどうにもならないところもあり、本当に考えさせられることが多いです。
専科がすぐ実現しない場合、必ず担任の先生が一人でやらなければいけないときが来る、そのときの先生方の不安をどうしたら少しでも解消していけるかですが、あちこちを見ていると、腹をくくった時の小学校の先生の底力を感じることがとても多いです。外部人材におんぶにだっこで自分がやらないでいた地域よりも、経済的な理由で担任がやらなきゃいけなかったところのほうが、おたおたしていないなという印象も持ちます。
区や都や国の委託の研究で、初めは校長先生がどうしてとってきたと恨まれるわけですが、結局やってよかったに終わることも多いかなと思います。何が不安で、どうそれを解消したらいいかということについて、それぞれのお立場でお話しいただけますか?


【権田】とても現実的な話ですが、習うより慣れろで、やるしかない。
モデル研究を受けたときに、ALTの先生がいても先生方がT1ですよと伝えたので、教員はほんとうに真面目に頑張っています。英語がほかの教科と違うという意識を考えなおさなければいけないと思います。ほかの教科も探求型の学習で「主体的、対話的で深い学び」に向けて授業改善をやっていくわけで、英語も同じです。ただ、クラスルームイングリッシュで、何言かを教員が英語で話しながら、子どもたちと授業をつくっていく、学びの形態は、ほかの教科と何ら違いはないと腑に落ちてしまえば、今日のメインはこれ、そのために子どもとどんな活動を楽しもうかという授業の流れができていくので、根底から考え直すと、ハードルは低くなってくるのかなと思います。

【粕谷】研修などをやっていても、最後にはほかの教科と一緒ですねとおっしゃる方が多いです。ただ、やっぱり外国語というと、教員としての力量とかと関係なく無理なことだという思い込みがすごくありますね。

【権田】子どもが真剣に聞いてくれると、教員としてはうれしくなります。一緒にゲームで楽しめると、それもやりがいにつながりますよね。

【粕谷】子どもが変わっていったり、子供が導いてくれたりで明日頑張れる仕事だと思うので、そういうところの手ごたえですね。

【小田】権田先生がおっしゃったように、メインがこれだから、それをできるようにするにはどんな活動がいいのか自分で考えることで、自分も楽しくなり、やりたくなってくる。そして実際にやってみて、もし少し違ってもまた次修正すればいいことなので、研究をとってくるとか、やるしかないという環境をつくるのが一番大事なことなのかなとお話をしていて感じたところです。

【小林】昨日、県立の特別支援学校の先生の授業のユニバーサルデザイン化についてのお話を聞く機会がありました。その中で、「英語の授業ってわりと昔から構造化が進んでいますよね」という言い方をされていました。中等部の英語の授業を指しているのですが、あいさつから始まって、歌があって、帯活動のウォームアップがあって、アクティビティー1、アクティビティー2があって、終わりという一つの流れがある程度固定化されているということです。さっきのALTとの打ち合わせの部分でも、授業がある程度固定化してくると、ここでこういうふうに振るからこうやってねという打ち合わせも短時間で済むようになります。
あとは、実技のお稽古的な部分で、支援員さんやALTが言っているのを見て、「そう言えばグループをつくれという意味になるのか」とか、「そう言えばペアになりなさいという意味になるのか」と、自分もそうやって勉強していったところがあるので、そういう言い方を少しずつ学習しながら、経験値を上げていくということかなと思います。

小学校英語教育の目的:言葉を学ぶ楽しさの本質を英語学習を通して理解させる

【粕谷】これから教科になって、評価も入ってきて、小中高と連携していく中で、インプットの質と量ということはとても大きな課題になっていきます。その全責任を担任の先生が負う必要があるとは思いません。活用できるものを活用すればいいわけですから。それでも、担任の先生が請け負う部分については、何かの方策が必要だと感じています。

【権田】そうですね。aとかtheとか、atとかそういうのをどうしようかというのも出てきます。ただ、教科化に向けて5, 6年の担任が今、悩んでいるのは、子どもたちが英語で話したいという必然性をどうやって喚起していくかというところです。新宿区は外国の方がたくさんいるのですが、東南アジア系の方が圧倒的に多くて、子どもたちはこの方々が英語を話すのかどうかわからないので、英語で話しかけないのです。「これを伝えるのに英語じゃなきゃだめなんだ」という必然性が子どもたちにないと、ただ今日のトピックはこれですよ。それではこの言い方を練習しましょうということだと、ただの繰り返しであり、記憶だけであり、使おうという意欲につながらない。その単元のゴールイメージをどうやって持たせたらいいのだろうかと悩んでいます。言葉の繰り返しの授業だけだと、高学年の子どもたちは知的好奇心をどこで満足させるのか。この英語の言葉を学んだことが、ほかの教科との関連とか、もっと使ってみたいとか、調べてみたいというところにどうつなげられるのかという悩みです。教科となると、教える内容や目的というのが、外国語活動とは違うところで難しさがあります。
外国語活動のときは、新しい言葉やキーフレーズを教わり、ALTの先生と繰り返しの練習をし、それを使ったゲームをやって、今日は何という言葉が言えるようになりましたという授業でよかったのでしょうが、教科となったら5, 6年生の必然性と知的好奇心をどうやっていこうかと考えています。

【粕谷】そこは語学学習のキモ中のキモのところで、本来外国語活動であっても、今おっしゃったようなことはカバーしても構わなかったはずですが、子どもが言えるようにさせることに邁進してきたようなところがありますね。言葉の深い学びに着目できる先生たちはほんとうにご立派だと思います。読み書きが入れば教科になったようなイメージがある中で、そういった点を気づく先生たちの力というのはやはり頼もしい。
コミュニケーションだけに限定すると、なぜ日本人同士で英語を話すの?と思ったり、僕は一生使わないからもうやらなくてもいいということになったりするので、何のために外国語を学ぶのかというところを、もうちょっと考えておくといいかなと思います。

【権田】外国語活動を今までやっていた中でアンケートをとると、ほとんどの子どもが、学年によっては100%が、「楽しい」というところが「そう思う」「まあそう思う」のA評価に当てはまるのですが、その楽しかった中身というのは、ゲームが楽しい。
それでは、自分が授業で習った英語を使って友達と積極的にお話しできたかというと、やはり自信がないから半分くらいになってきます。耳からたくさん聞いて話す機会、日常的になれ親しむような機会をつくっていくと、より発信しやすくなります。
今年、6年生と鎌倉に移動教室に行ったとき、大仏の辺は外国の方がたくさんいらっしゃって、英語が使えそうだと思った子どもたちは「Hello. Where are you from?」と話しかけていました。子どもたちも聞いたり話したりという機会が増えることによって自信をつけていくのだと思います。
今、中高生の調査では「英語は将来役に立つと思う、話せると格好いいと思う。でも自分は英語を使った職業にはつかないだろう、留学はしないだろう。」と否定的です。こういう積み重ねによって、もっと英語を使ってみたいという中高生が増えていくのではと考えています。

【粕谷】外国の人と話す場面を作るのが大変な学校もあるので、ALTの方が上手にその役割を果たしてくださるといいなと思います。そうやってハードルをちょっとずつ下げてきて、先生たちの不安もとって、「他教科と一緒です、英語も小さいステップからいきましょう。」と励ましていきながら、もともと持っておられる教師としての力を土台にやっていけたらいいですね。
権田先生から指導法の部分、授業の中身や、どんな言語経験をしておいたらいいかというお話が出ましたが、教科のねらいを達成するために、授業の中でどんな経験ができたらいいでしょうか?

【小田】今教えている3, 4年生だととにかく単純に英語をしゃべってみたい、意味がわかったらうれしい、言えたからうれしいという程度のモチベーションでスタートしていきます。英語の歌を歌えることはすごいと思っているようです。自分で歌詞を覚えて、メロディーを覚えて、しかもそれが英語ってすごく格好いいことだと小さいなりに思うみたいです。授業で1回しか歌っていないのに、休み時間に歌ったり、他の組で歌っているのに合わせて歌ったり、他学年で歌った歌を思い出して歌ったりしています。歌は英語らしいリズムが自然に入ってくるので、授業で扱って習得させるところまでいくと、すごい価値があると思います。英語を好きになってほしいこの時期に入れるのがいいと思います。
ただ、5, 6年で教科になると評価を数値であらわすということになり、言えたのか言えていないのか、聞き取れているのか、わかっているのかいないのかを見取っていかなければいけないのが課題になってくると思います。
中学校での英語を学ぶモチベーションは受験じゃないかなと思っています。スタートで外国語はかっこいい、しゃべりたい、しゃべれたとやってきたモチベーションが、中学校に行くと受験になってきますよね。この辺の不具合というか、接続のうまくいかないところ、ここもまた課題になってくるのかなと思ったりします。

【小林】歌や絵本の素材は小学校の先生、読み聞かせもお上手ですし、歌もCDという音源があって、小学校の子どもたちが聞き取ってきれいに歌うのは、すごく衝撃的でした。かけておくだけではだめで、そこには先生方のご指導があったのかもしれないのですが、子どもたちがとても楽しそうにやるし、絵本も、日本語の読み聞かせの技術をお持ちの先生が上手に英語を使われると、素材としてはとてもいいなと思います。
少し話が戻りますが、私はずっと中学校勤務でしたが、中学校でも知的好奇心を満足させるとか、強いていえば受験ぐらいで、英語を使う必然性はなかったと思います。でも、小学校、中学校、高校、いずれでも話せるようになりたいという思いは、わりと多くの子どもたちが持っていて、何がモチベーションになるかというと、これはきっと英語だけではないと思いますが、「わかって楽しい、できたから楽しい」ということだと思います。だからわかるようにさせてあげる、できるようにさせてあげるというのが、自分が中学校で英語を教えていた時の授業づくりの基本でした。歌も絵本、例えば「おおきなかぶ」や、「Brown Bear, Brown Bear, What Do You See?」のような絵本も、繰り返しがたくさん出てきて、繰り返しているうちにできるようになるのが、自分が教科の英語を教えていたときの目指す授業でした。外国人と話すというゴールはうんと遠くにあるけれども、多くの中学生が英語が楽しい、英語を頑張ろうと思うのは決して受験だけではなく、やはり話せるようになることなのです。ここは実技教科と同じで、跳び箱を跳べたり、タイムが伸びたりしたら体育が楽しくなる。英語も同じように、言えるようになって何か通じたとなると楽しくなる。だからALTが来るときは練習試合と言っています。授業でたくさん素振りをしておいて、ALTのところへ話に行ったら通じたけれども、聞かれた質問がわからなかった。練習試合をやって課題が出てきたら、今度はチームで作戦を練って、次の練習試合に備えよう。素振りが足りなかった、走り込みが足りなかったねというのを授業でやっているような感覚で、楽しかったという経験をさせたいなと思っています。これは自分が中学校で教えていたときの話で、小学校の高学年でも共通して小学校で使えるような形になるといいかなと、今聞いていて思いました。

【粕谷】CDをかけておくだけでも子どもたちが主体的に意味と音を結びつけて、あれはこういうことだなとわかっていく小さい手ごたえが塵積るといつか外国の人と話せるようになるかもしれない。受験も大事なので、受験を忌み嫌ったり、避けて通ったりとかではなく、受験にも対応していきながら、自分の人生の中に英語がどう位置づいて、どう自分で使うか、使わないかというのを、子供たちがイメージできたらいいかなと思っています。そうした中、小学校で学んだ部分においては、やはり楽しかった経験が大きなことになるのかなと思います。ただ、その楽しいがゲームばかりだと、残念だということですよね。だから、言葉を学ぶ楽しさの本質を、大人が背中で見せていけるといいかなと思います。
歌や絵本は教材としてこれからますます人気になると思います。歌は英語らしい音の流れを身につけるのにとてもよく、通じやすい音を獲得するのは、コミュニケーション上とても大事です。絵本は必然性という言葉ではぴったりこないけど、言葉が生きているもののお手本ですよね。プロの作家さんが子どもに、「どう、おもしろいでしょう?」、「次どうなると思う、君たち」と読者を想定して書いてくれたものなので、うまく使ってやっていくと、すごく心を動かしながら、言葉を自分で獲得していける。今後ますますいろんなところで研究が進んでいったらいいなと思います。
まだ観点が示されていないので心構え的なことになると思いますが、前向きに子どもが成長し、授業を磨いていくための評価についてお伺いしたいと思います。

評価について

【権田】  一人一人の子どもがどの程度聞き取り、話せているのかという評価はしなければならなくなると思います。勤務校では担任とALTと2人で教えているので、個別のやりとりを一人ずつやっていく活動を授業の中に組み込むと毎時間何人かのチェックはできます。例えば国語の授業では机間指導をしながら子どもたちを見取っているので、それと同じようなことを英語の授業の中でもできると思います。ALTと担任とが分担して一人一人とやり取りをしたり、ALTとやり取りをしているところを担任が見て評価したりするなど評価につなげる活動を授業づくりの中で考えておかなければいけないと思っています。

【粕谷】どれだけ力をつけたか見る視点は他教科と一緒ですよね。教師が授業をするとはそういうことだなと、今伺っていて改めて思いました。

【小田】今までのゲームをたくさんやって楽しい授業から大きくかじを切って、1時間の中で見取る場というのを必ずつくり、定着を目指して授業を組み立てていかなければいけないところが、他の教科とは同じですが、今までの外国語活動との違いを感じたところです。

【小林】私は小学校の評価はあまり突き詰め過ぎないほうがいいと思います。教科化になって数値の評価になるから、できたかできないかを見きわめなくてはならない、1時間の中で見取らなくてはいけないと、あまりぎちぎちにし過ぎないほうがいいかなという気がします。一方で教科になると、教科書ができて、リスニングテストとかがついてきちゃったりするのかしらとも思います。また体育の例ですが、50メートル泳げたらAでも、1回目で泳げる子もいるし、10回目で泳げる子もいますよね。でも50メートル泳げるのがAだったら、10回目でできてもAじゃないかと思うのです。だから評価場面は、ある程度練習を積んでから設けてあげないと難しいというのが中学校でやっていた評価です。
今まで外国語活動でやってきた先生方が、よく会話をしていたねという見取りと、能力の部分をどういうふうにしていくのか、どういう方向性で出てくるのかというところですが、あまりぎちぎちに能力を評価する必要性が果たしてあるんだろうかと思うし、一方でほかの授業と同じように先生方が、この子がまだ言えていないから、もうちょっと練習が必要だという見取りの部分と、いわゆる評定的な部分と評価の部分を全く違うという形ではなくて、ソフトランディングをしていかないと嫌いになってしまいますよね。

【権田】自分は楽しんで、一生懸命話したり、かかわろうとしたりしていたのに、そこに評定がついてきたら・・・。

【粕谷】ぎちぎちし過ぎず、でも教科としても保ちつつというあたりですね。わかりやすいし、説明責任は果たさなければいけないから、「Yes.」だとB、「Yes I do.」だとAみたいなのをやってしまいがちですが、やはり見取るというか、学びの全体から見きわめていくのが大事だと思います。
 小中高の連携で小学校の位置のイメージが湧きづらいかなとも思っています。算数だと中学校に行くと、こういうことをするとわかっている。社会も日本史でここまでやったら、中学校でまた土器から始まってより深めてくれるみたいなことが、何となくわかっているのに英語は自分の経験しかない。小学校で片をつけなきゃと思っている人や、中学校からはつらく苦しいので、小学校こそ楽しくやらねばみたいに思っている人もいる中で、10年間の英語教育で小学校はどうしたらいいのでしょうか?

小学校英語教育の役割 ~小中接続の実際~

【権田】移行期と、中学の全面実施の時期と、高校の全面実施の時期とずれていて、小学校4年生は大変ですよとか、5年生、大変ですよ、受験がかかりますよという話があります。やはり小学校の指導要領を読み、中学校ではこういうことになっていくというのを、教員は両方を知っておかないとまずいですよね。そこは対比をしながら、小学校でやったものが中学校ではこういう形になり、それが受験にこうかかわっていくというところまであるので、移行期に落とさずやってくださいと、赤線がついた対比表が出ているのですが、それを移行期の中でどれだけできるかというのは、小学校としては大切にしなければいけないところでありながら苦しいところでもあります。

【粕谷】その点はほかの教科よりも、新しいということも含めて、達成するのに努力が要る部分ですよね。

【権田】大文字、小文字が入ってきました。小学校3年生からローマ字も習っていきます。具体的にはネームプレートをどうしようかと。アルファベットは4線で書かせてくださいと言われる。3年生では、ローマ字を習うのが2学期です。外国語活動でその日使うシートを配ったり、ネームプレートを配ったりという活動をさせたいとなると、3年生の大文字が出てくるのは1学期になりますよね。

【粕谷】外国語活動では1学期ということですね。

【権田】ローマ字は訓令式とヘボン式の両方を教えますが、訓令式が中心になっています。国語では、ローマ字の扱いをどう考えているのかすり合わせもできていないところで、大文字、小文字がわかる、発音できるというところまでもっていく。大人が簡単だと思っても、子どもにとっては意外とアルファベットは難しいと思います。

【小田】小学校3年生を担任していて、ローマ字を教えましたが、道を歩いていてローマ字表記のものを探したり、パソコンで文字入力をするためのローマ字として国語では出てきます。外国語でも文字をやるかというと、3, 4年生ぐらいは音をたくさん聞く時期間でまだ文字を読むのはできないので、絵本とか歌とかで音をたくさん入れておいて、高学年になったときにあの音はこんなふうにあらわすということで、アルファベットが出てきます。3年生で学習したローマ字を5年生で書いてみてもほとんどめちゃくちゃで、全然覚えていないんですね。ローマ字表記だとAは「ア」なんですけど、アルファベット、A「エイ」に変わりますよね。「ア」だったのが2年たったら「エイ」に変わるという、大人から見るとすごく混乱するのではないかと思いましたが、もう忘れているようでした。最初に外国語活動をやったのは5年生でしたが、ローマ字でうまく入力ができなかったり、ローマ字で日本語を表記することはできなくてもアルファベットのABCソングは歌えるんです。ABCのほうが深く根付いているのかなと思ったりします。
今回、10年間を見越してというのを考えると、最初は音をいっぱい聞いて、たまってきたら言いたくなったり、書きたくなったりという部分なので、中学校に行くまでにそこのところを丁寧にやっていく、中学校の前倒しではなくて、中学校ではできないことを小学校文化の中でやっていくのが役割かなと感じているところです。

【小林】指導主事だったときに見た1年生の授業は衝撃的でした。指導訪問に行ったときに、小学校の先生がすごく丁寧に、「つくし」とか、1画で書ける文字からやって、45分を展開する授業を見ました。私は中学校だったので、はい、1時間目、アルファベットやります、大文字を今日やりました、次回は小文字をやります、小文字をやりました、3時間目はテストですという授業をやっていましたので、小田先生がおっしゃられていたように、3年生から6年生までの間にたくさん見たり、身近にあるアルファベットに触れたり、そういう意味では小学校の先生の文字指導のノウハウというのは、ものすごく期待も大きいし、小学校の先生のお力がすごく発揮できるところだと思います。ABCソングが入っていて、ABCの順番がわかると、中学校ではすごくありがたいです。ABCソングで順番がしっかり入っていると、辞書引きにとても役に立ったり、小学校で積み重ねてきたことが、中学校になるともう少し豊かな表現で言えるようになったりします。今日お話を伺って、外国語が入ることが先生方のためにも教員人生をきっと豊かにしていくチャレンジにもなり、小学校の教育というものを根底から見直すきっかけにもなり、よい外国語との出会いにかじを切るためのエネルギーにもなりで、前向きに進んでいける手ごたえを、お三方の話を聞いて強く思いました。ありがとうございました。 

ー了ー

文責:教員研修部)