ELEC出前研修報告書
8.調布市第七中学校
ELEC出前研修
‐実際の授業を踏まえた研修や指導助言、専門家が継続的に学校を訪問‐
ELECでは2015年度より英語科教員の指導技術向上のために、求められる知識や技術を提供する「ELEC出前研修」(授業改善のための専門家派遣事業)を実施しています。英語教育の専門家(大学教授や教員研修指導経験者)が継続的に学校を訪問し、先生方の疑問・課題と実際の授業内容を踏まえた指導助言や研修を行っています。
調布市第七中学校がELEC出前研修の窓口となる調布市立中学校教育研究会英語部は調布市立(小)中学校における英語科教員の指導技術向上を図るため、英語教授法の理論および実践に関する研究を深めることを目的とした組織である。
調布市立中学校教育研究会英語部は「主体的に取り組む生徒の育成~アクティブラーニングを活用した授業の展開」というテーマで研修を進めている。
第1回目 2017年7月26日(水)
講師 :和歌山大学教授 江利川 春雄先生
テーマ:「生徒をアクティブにする協同的な英語授業づくり」
(1)研修内容
- アクティブラーニングとは
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- 次期学習指導要領の特徴から
- アクティブラーニングを行うための土壌づくり
- オキシトシンの効果
- 他己紹介
- 英単語しりとり
- 一斉授業とアクティブラーニングのバランスをとること
基礎、基本をしっかり反復練習をする。その土台の上に深い学びを設定する。 - 対話には3つの種類がある。
- ①人との対話
- ②テキストとの対話
- ③自分との対話
- 暗記型学力からPISA型学力へ
教科を横断した応用的、実践的な知識→協同が必要
- 協同学習について
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- 協同学習=アクティブラーニングの最高段階
- 協同学習で教育格差を是正する
- 協同学習の効果
- ①人間関係・居場所感の向上
- ②自尊感情
- ③問題行動の減少
- ④学力の向上
- ⑤学びを楽しむ自立学習者への成長
- 協同学習のやり方
- ①チームビルディング活動で「学び」の土壌づくり
- ②目標、授業の流れ、ルールの明示で自律学習へ
- ③全員が役割を分担し、高い目標に挑戦
- ④基礎的な共有の課題+高度なジャンプ課題
- 一斉講義型だけではなく・・・ペア・グループでの意見交換、ミニホワイトボード、他者に教える。
活動に自己決定を含める - 板書をノートに写すだけではなく・・・ポスター、新聞で発表、レポート等で掲示する。
- 成績評価は専ら教師だけではく・・・評価の一部を生徒が参加し、自己評価や他己評価を行う。
(2)感想
調布市教育研究会は昨年度に引き続き生徒がアクティブに授業に参加することをテーマとしており、2年連続江利川先生に講師を務めていただくことで、より深く研究を行うことが可能となった。
今回の夏期研修では、アクティブラーニングの定義から始まり、次期学習指導要領で求められているという背景、具体的な実践例について実際に体験をすることで学んだ。特に以下の4点について、目が開かれる思いであった。
- アクティブラーニングを行う前の段階で、土壌づくりが必要である。
- 一斉授業とアクティブラーニングのバランスを保つことが重要である。
- 「対話的な学び」授業には3つの対話がある。
- 各授業には2つの協同学習を設定する。
- に関しては、生徒同士が親和的な雰囲気で授業に臨めるよう、教員の日ごろの学級づくり、グループづくりが必要であると学んだ。
- に関しては、授業の中で活動をいれることを第一目標にしてしまいがちな状況の中で、基礎・基本を定着させるための一斉授業の必要性を再確認しました。基礎・基本が定着した土台の上に深い学びとなる課題を設定し、徐々に拡大させていくことの大切さを学んだ。
- に関しては、緘黙傾向や他とコミュニケーションを図ることを苦手とする生徒に対して、何がなんでも人と対話をしなければいけないのではなく、教科書との対話を通じて学ぶことができる。生徒の実態に応じて課題を設定する必要性を学んだ。
- に関しては、基礎基本取得のための「共有の課題」の後、一斉型の説明、そしてハイレベルの探求型に展開する。授業の構成について学んだ。
教員が実際に体験することで、協同学習に対してイメージをもつとともに、その効用について深く学ぶことができた。
第2回目 2017年10月11日(水)
講師 :和歌山大学教授 江利川 春雄 先生
テーマ:「主体的に取り組む学習者の育成~アクティブラーニングを活用した授業の展開~」
(1)研修内容
- 本時の授業で学んだこと
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- 小中連携による研究協議の素晴らしさ
- 安心と信頼感の温かな授業、あふれる笑顔
- 大半の子が学びから離れていない
- テンポの良い。English onlyによる見事な授業
- さらなる上を目指して
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- もっと複雑で、みんながいなければ解決しないようなジャンプ課題を設定する。
- → グループで関わり合う必然性を生み出す。
- 課題終了後や活動後に隙間時間を作らないようにする。
- → 授業の始めに50分後の目標とその手立てを、明確に提示する。
- 教師の役割の最小化
- → 生徒が活動する時間を多く設定する。必然的に教師の役割が少なくなる。
- 指導案はシンプルなものにする。授業の流れを記載し、時間は記載しない。
- → 時間や内容にとらわれ過ぎずに、生徒の実態に応じた授業ができる。
- 活動の座席は、男女が市松模様に座るのが良い。
- → 男子と女子の壁を築かないようにする。誰とでもコミュニケーションをとる必然性を生み出す。他者からさまざまな考え方を学ぶことができる。
- 「話し合う」から「深め合う」へ・「わかる」から「他人に説明できる」へ
- もっと複雑で、みんながいなければ解決しないようなジャンプ課題を設定する。
(2)感想
今回の研修会では、研究授業の中のさまざまな場面を切り取って解説していただくことで、アクティブラーニング・協同学習導入のポイントについて触れていただいた。
特に、以下の2点について、目を開かれる思いであった。
- 課題終了後や活動後の時間こそ大切にする。
- 難易度の高いジャンプ課題を設定することが大切である。
- に関しては、授業の始めに、授業を終えたときにどのような状態であればいいのかという目標と、それを達成させるための具体的な手立てと手順を示すことが必要である。生徒はそれを確認することで、主体的にさらなる課題を見つけ取り組むことができる。
私個人としては今現在、活動を終えた生徒に「他の人のサポートをする」「問題集を解く」という、場当たりな指示になっていることが課題である。 - に関しては、難易度が高いほど、グループで関わり合う必然性を出てくる。そのとき、他者からさまざま考えを学び、「深め合う」関係を築くことができる。また、他者とコミュニケーションを図ることで。「わかる」から「他者に説明できる」ようになる。
私個人としては今現在、容易な課題を設定した場合、理解力のある生徒のみが参加して解決してしまい、生徒同士の「深め合い」が見られないことが課題である。
来月は模擬授業の形をとることになるが、50分間の生徒の変容をとらえ、アクティブラーニングをどう展開していくか、先生方と模索していきたい。