新学習指導要領を見据え、3観点をどう評価するか

松下信之(大阪府教育庁主任指導主事)

1 はじめに

 学習指導要領の改訂(平成29年、平成30年)にあたり、学習評価については、資質・能力の三つの柱に基づいた目標や内容の再整理を踏まえ、「関心・意欲・態度」、「思考・判断・表現」、「技能」、「知識」(外国語科は「コミュニケーションへの関心・意欲・態度」、「外国語表現の能力」、「外国語理解の能力」、「言語や文化についての知識・理解」)の四つの観点から、「知識・技能」、「思考・判断・表現」、「主体的に学習に取り組む態度」の三つの観点に整理された。特に、高等学校については、「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」の別紙3において、指導要録に記載する事項を「各教科・科目の目標に基づき、学校が生徒や地域の実態に即して定めた当該教科・科目の目標や内容に照らして、その実現状況を観点ごとに評価し記入する」ことが明記され、指導要録の参考様式にも各教科・科目の観点別学習状況を記載する欄が設置されるなど、観点別学習状況の評価の更なる充実とその質を高めることが求められている。

現在、多くの学校が三つの観点での評価方法について検討をしているものの、評価規準の設定や実際の評価の方法(ペーパーテストやパフォーマンス課題の評価方法)について悩んでいる。特に、教科「外国語」においては、「聞くこと」、「読むこと」、「話すこと(やり取り)」、「話すこと(発表)」、「書くこと」の五つの領域が「内容のまとまり」とされており、新学習指導要領では「内容のまとまり(領域)」ごとの目標が示されていることから、五つの領域を三つの観点でどのように評価するかがわかりづらいという悩みをよく聞く。

 そこで、今回は、各校において新学習指導要領の実施に向けた取組みを検討する際の参考となるよう、新学習指導要領における学習評価の考え方を踏まえた領域別の目標、評価規準の設定や、単元(題材)における観点別学習状況の評価の進め方を、具体例を挙げながら提案したい。

2 新学習指導用要領の実施に向けた取組みの提案

(1)領域別の目標、評価規準の設定

 学習指導要領「1 目標」に示される内容のまとまり(五つの領域)別の目標の記述が観点ごとにどのように整理されているかを確認したうえで、各課で取り扱う題材、言語の特徴や決まりに関する事項(言語材料)、言語材料において設定する設定するコミュニケーションを行う目的や場面、状況など、また、取り扱う話題などに即して、以下のように「内容のまとまり(五つの領域)ごとの評価規準」を作成する必要がある。

上記の例では、あるレッスン(赤で囲んだレッスン)においては「読むこと」「話すこと(発表)」、また、別のレッスン(青で囲んだレッスン)においては、「聞くこと」「書くこと」に重点を置いた指導を行うことを想定している。

(2)単元(題材)における観点別学習状況の評価の進め方

ここでは、(1)「領域別の目標、評価規準の設定」で示したレッスン(赤で囲んだレッスン)における観点別学習状況の評価の進め方について紹介する。

① 指導と評価の計画

ア) 科目名:「英語コミュニケーションⅠ」

イ) レッスン: Lesson ○、“○○○○”

ウ) 領  域:「読むこと」「話すこと(発表)」

エ) 評価規準:

知識・技能思考・判断・表現主体的に学習に取り組む態度
【読むこと】
受動態の意味や働きの理解を基に、英文の概要を読み取る技能を身に付けている。(技能)
【話すこと(発表)】
ごく身近な事柄(絵画や本、漫画等)について受動態などを用いて話す技能を身に付けている。(技能)
【読むこと】
ごく身近な話題(絵画や本、漫画等)について書かれた文章を読んで、概要を捉えている。
【話すこと(発表)】
ごく身近な事柄(絵画や本、漫画等)について簡単な語句や文を用いて話している。
【読むこと】
ごく身近な話題(絵画や本、漫画等)について書かれた文章を読んで、概要を捉えようとしている。
【読むこと(発表)】
ごく身近な事柄(絵画や本、漫画等)について聞き手に配慮しながら簡単な語句や文を用いて話そうとしている。

② 具体的な評価方法(評価課題や判断基準)

ア 「読むこと」に関する評価

(ア) 知識・技能の評価(ペーパーテスト)

1 あなたは留学先において、日本のものについて写真を見せながら紹介することになり、説明の読み原稿を作成しました。空所に入る語を選びなさい。

選択肢      (a) a furoshiki     (b) a yunomi     (c) shogi    (d) tofu

評価方法)

考査(ペーパーテスト)で1の問題を出題した場合、正答数により、考査における「知識・技能」の評価結果を以下のように行うことが考えられる。

※「知識・技能」を測る大問が複数ある場合は、全ての小問の正解の割合で評価結果を決めることが考えられる。

(イ)思考・判断・表現の評価(ペーパーテスト)

2 アメリカから来た留学生のDavidが旅行先からあなたに次のようなメールを送りました。 メールを読み、選択肢から最も適切なものを選びなさい。

e this email in   1  .

① Belgium   ② France   ③ Japan   ④ Switzerland

問2 起こった出来事順に並べ替えなさい。(完答)

    2   →    3    →    4    →    5 

① David and his father saw art works in France.

② David heard that scenery in Switzerland is beautiful.

③ David learned about the European notes from his father.

④ David took a picture of a sign in Belgium.

問3 If you reply to David’s email, the title of your email will be “  6  ”.

① My trip to Belgium

② My trip to Hokkaido

③ My trip to Osaka

④ My Trip to the US

(評価方法)

考査(ペーパーテスト)で2の問題を出題した場合、正答数により、考査における「思考・判断・表現」の評価結果を以下のように行うことが考えられる。

※「思考・判断・表現」を測る大問が複数ある場合は、全ての小問の正解の割合で評価結果を決めることが考えられる。

(ウ)主体的に学習に取り組む態度の評価(ペーパーテストの振り返り)

(評価方法)

考査(ペーパーテスト)後、振り返りをさせた場合、振り返りの文章を基に、以下の基準で「主体的に学習に取り組む態度」を評価することが考えられる。

イ 「話すこと(発表)」に関する評価

以下に、パフォーマンステスト(スピーキングテスト)の例を示す。今回は、生徒1人に担当教員もしくはALTがインタビューを行う形式でテストを実施し、「知識・技能」、「思考・判断・表現」、「主体的に学習に取り組む態度」を評価する方法について示す。

○ 準備するもの

・浮世絵等の絵画や本に関する情報が記載されたカード(各クラス1枚)

(例)

○ 内容

・生徒がカードを20秒間見た後、1分間でその内容を説明

・生徒自身の好きな本や映画等に関する質疑応答

○ 評価の規準

以下の評価基準に基づいて評価する。

○ 教員と生徒の発話例及び評価結果

・教員と生徒の発話例(T: Teacher   S: Student)※挨拶等は除く

T: First, look at the card and think about what to say for 20 seconds.  After  that, please explain it to me.

(20秒後)Please begin.

S: This is a very famous ukiyoe print.  It … created by Katsushika Hokusai. 
Katsushika Hokusai was born in seventeen ….  Wave、 ship and Mt. Fuji are printed.  This Ukiyoe is printed on stamps.  It will … one thousand yen …

T: Thank you.  Now I will ask you some questions about you.  What is your favorite book?

S: I like “Harry Potter”.

T: Can you tell me more about Harry Potter?

S: Harry Potter was write by J.K Rolling.  Harry Potter is my favorite.  It … is … read by many people all over the world.

T: That’s it for today’s speaking test.  You may go now.

・採点の結果

4 おわりに

新学習指導要領における学習評価の考え方を踏まえた領域別の目標、評価規準の設定や、単元(題材)における観点別学習状況の評価の進め方について、具体例を挙げながら提案を行った。評価規準や基準については、「生徒にどのような力を身に付けさせたいか」「その力が身についたかどうかをいつどのように測るか」を教科の担当者全員で共有したうえで、各学校の実情に応じたものを作成することが必要である。その際には、ここで示した評価の考え方や評価方法の例をたたき台にしていただけると幸いである。

今回は、「読むこと」と「話すこと(発表)」の二つの領域に関する評価方法を示したが、今後は、全ての内容のまとまり(五領域)を、三つの観点で評価する方法について研究を進めていく。また、研究の成果や好事例を普及するなど、学校が観点別学習状況の評価を円滑に実施できるよう支援を行っていきたいと考えている。

参考文献

国立教育政策研究所(2020)『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料(小学校外国語・外国語活動)』国立教育政策研究所

国立教育政策研究所(2020)『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料(中学校外国語)』国立教育政策研究所

文部科学省(2017)『中学校学習指導要領(平成29年告示)』文部科学省

文部科学省(2018)『高等学校学習指導要領(平成30年告示)』文部科学省

文部科学省(2019)「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」

(まつした のぶゆき)