言葉を話す能力は、私たち人間の大きな特権の一つですが、この能力はいつ、どのように育まれるのでしょうか?言語の臨界期という概念が示すように、幼少期の学びが非常に大切だと言われています。その象徴的な例が、ジーニー事件です。この事件を通して、言語習得のメカニズムや臨界期について少しだけ触れてみたいと思います。
言語の臨界期とは
言葉を自然に身につける力が幼少期(だいたい0~12歳)にピークを迎え、それを過ぎると習得が難しくなると考えられていることです。この考え方を象徴するのが、ジーニー事件です。
ジーニー事件の概要
1970年に発見されたジーニーは、13歳までほとんど言葉を聞かず、社会から隔離されて育ちました。発見後、彼女に言語教育が試みられましたが、文法や複雑な表現を自然に習得することはできませんでした。この事例は、言語発達が臨界期内での適切な刺激にどれだけ依存しているかを示す重要な証拠とされています。
言語の臨界期の考え方は、幼少期の脳が特に柔軟であることを物語っていますし、できるだけ早く言語を学ぶことの大切さも教えてくれます。しかし、臨界期を過ぎてもあきらめる必要はなく、学習環境やモチベーションが大きな役割を果たすので、年齢を問わず、効果的な学習方法を見つけることで、いつからでも言語力を伸ばせる可能性があるのです。
参考資料
Eric Lenneberg – Biological Foundations of Language (1967)
Patricia K. Kuhl – The Scientist in the Crib: Minds, Brains, and How Children Learn (1999)
Genie: A Psycholinguistic Study of a Modern-Day “Wild Child” by Susan Curtiss (1977)